1972年1月、千葉県で初めて精神科クリニックを開設し、これまで多くの患者さんの診療に当たってきました。患者さんと接する中で人間には根源的な苦痛、苦悩があること、またその理解なしにはその人にとっての癒しに繋がらないことを痛感してきました。社会経済情勢の著しい変化や価値観の多様化が進む現代は、希望を見出せず、生き辛さを抱え苦しむ人、心を病む人を多く生み出してきました。
このような状況の下、自己の生きる意味を模索し、存在の価値と疑問、その悩みに寄り添えるようなボランティアの養成を願い、1989年、千葉いのちの電話を開局するに至りました。また2005年にはスピリチュアルケア・ささえの会を開設しました。医療の場で出会う患者さんと、またボランティア活動で出会う人達と「人間とは何ぞや」という普遍的なテーマに立ち向かい、応答を続けることは、私のライフワークといえるかもしれません。
この間、WHO
では人間の精神的、身体的、社会的な側面だけではなくスピリチュアルな側面の重要性が提言され、日本においても先駆者によってスピリチュアルケアが導入されてきました。そして2007年日本スピリチュアルケア学会が立ち上がりました。スピリチュアルケアを広く社会に伝えていくためには、スピリチュアルケアの担い手の養成が急務であり、2013年、日本スピリチュアルケア学会認定の指導者と講座、スピリチュアルケア師の資格認定が始まりました。千葉においても学会認定の機関となることを目指して、保健医療、福祉、教育などの分野でケア職にある人、志のある市民に対して、スピリチュアルケアを実践できる人材養成を決意して、「スピリチュアルケア研究会ちば」の設立に至った次第です。
当研究会について
沿革
当研究会の歩み
「NPO法人スピリチュアルケア研究会ちば(以下当会と略す)」は、その前身である「スピリチュアルケア・ささえの会」の活動に端を発している。(2005年3月)
ささえの会はスピリチュアルケアの啓発のために講演会を開催するとともに、いのちの電話のボランティアを中心に集まり毎月の定例会でケース検討会を行い実践活動の振り返りを主に行なってきた。
「千葉傾聴センター」開設(2008年10月)後は、希望者にカウンセリング(1クール3回)を行った。「緩和ケア病棟のボランティア」を開始(2011年7月)し、実際にスピリチュアルケアにも携わるようになった。自己研鑽のために「連続講座<つながりあう「いのち」>」(2012年1~5月)を開催する中で、スピリチュアルケアのより広範な啓発・普及のために「スピリチュアルケア研究会ちば」を設立し、より組織的な活動の実践を目指した。そのために日常の活動(講演会等)と並行して、設立準備委員会を重ね、「なぜスピリチュアリティが求められるのか(講師窪寺俊之先生)」の問いかけを経て、設立総会(2016年11月12日)にこぎつけた。
当会の活動は、当初より「講演会(年一回)」「公開講座(年二回)」「連続研修講座(年八~十二回)」を定期的に開催し、いずれも専門職及び一般市民を対象にした「スピリチュアルケアの啓発・普及」活動及び「スピリチュアルケアに携わる人材を養成する研修講座」事業として毎年継続実施してきている。会の運営のため、月一回の定例企画運営委員会を欠かさず継続してきている。
NPO法人化(2017年10月)してからは、発足当初から目標としてきた「学会認定研修機関・臨床実習の場」の実現に尽力し、千葉市内の病院における「臨床実習」を始めることが出来た。また学会認定教育プログラムとして承認を受けた「スピリチャルケア専門講座」の開催(2022年4月)にこぎつけて、当会の研修修了者に対して、学会認定のスピリチュアルケア師への道が開けることになった。
また学会認定のスピリチュアルケア師の有資格者に対しては、他の教育プログラム実施機関(SaCRA)とも協力して、資格更新のためのプログラムとして、「会話記録検討会」(2022年9月実施)を開始している。
設立について
2016年11月12日
スピリチュアルケア研究会ちば
設立準備委員会 委員長 日下 忠文
設立の趣旨
現在、先進国では科学技術が大きな進歩を遂げ、人々に物質的豊かさ、便利さ、快適さなどをもたらしています。他方、大気汚染、公害、環境破壊、地球温暖化、その他多くのマイナスの影響も生じています。科学の一分野である医学も著しく発展しましたが、病気の診断・治療のみに目が向けられ、病で苦しんでいる患者さんへの対応は殆ど無視された医療が行われてきました。これらの反省から病気の診断・治療のみを行う「科学的医療」から、苦しんでいる患者さんを支える「全人医療」へと意識の変革を迫られることになりました。
こうした動きの中でV・E・フランクル、キュープラ・ロス、シシリー・ソーンダースなどの先達によって「スピリチュアリテイ」の存在が改めて認識され、「全人的スピリチュアルケア」が求められるようになったのです。WHOにおいても「疼痛緩和医療にあたっては身体的、心理的、社会的苦痛の他にスピリチュアルな側面も重視すべきである」と提言されました。
多様な価値観の併存する現代ではありますが、私たちは「スピリチュアリテイ」は、胎児から死まで存在すると認識し、全ての人が「スピリチュアリテイ」に目覚めて、自己の唯一、一回限りの人生を他者との関わりのなかで決定し、自分らしく生きることが求められています。当研究会はそうした社会の実現のために活動いたします。
設立発起人
新井 公人 | 国立病院機構 千葉東病院 院長 |
坂下 美彦 | 千葉県がんセンター 緩和医療科 部長 |
友田 直人 | 社会福祉法人 千葉いのちの電話 理事長 |
豊田 康義 | 国立病院機構 千葉医療センター がん診療部長 |
長谷川 匡俊 | 大乗淑徳学園 理事長 |
松澤 一美 | 千葉県社会福祉協議会 常務理事 |
水野 治太郎 | 麗澤大学 名誉教授 NPO 法人 千葉県とうかつ「生と死を考える会」 理事長 |
山崎 章郎 | ケアタウン小平クリニック 院長 |
日下 忠文 | 医療法人社団 望葉会 日下医院 院長 |
木村 登紀子 | 聖路加国際大学 名誉教授 淑徳大学大学院付属 心理臨床センター 相談指導員・研究員(臨床心理士) |
佐藤 俊一 | 淑徳大学 総合福祉学部 教授 |
手塚 一朗 | 医療法人社団 學風会 さいとうクリニック・家族機能研究所 講師・非常勤研究員(臨床心理) |
灰谷 由利子 | 社会福祉法人 千葉いのちの電話 事務局長 |
吉田 洋二 | スピリチュアルケア研究会ちば 設立準備委員会 事務局長 |
吉田 陽子 | スピリチュアルケア研究会ちば 設立準備委員会 事務局 担当 |